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目次
どんな人におすすめ?
この本はこんな人におすすめ!
- CPUの分野に入門したい人
- 電子工作が好きな人
本の情報
タイトル | CPUの創りかた |
著者 | 渡波郁 |
発行日 | 2003.09.30 |
読んだ感想
おどけた語り口で CPUができるまでを解説してくれる本
どういう経緯で読んだのかというと、元々 CPUの動く仕組みを学びたいと思っており、そんなときに職場の先輩からおすすめされて読むに至った
内容としては、初心者向けに 4bit CPUを試作するというもの
実際に読者が真似をして作れるよう、手順や注意点なども取り上げてくれている
(なお、「初心者向けに」「真似をして作れる」とは書いたものの、作業をするとなるとすごく地道で大変だと思う)
留意すべきこととして、2022年時点では廃番となっている部品もあると思われる 試作する場合はそれらを置き換える必要があるかもしれない
私は試作こそしなかったが、CPUの仕組みを概ね理解することができた
それでも実際に作ったほうが深く理解できると思うので、電子回路のシミュレータを使って作るのがいいのかもしれない
なお、解説にはよく電子回路が登場する
私はこの分野については全くといっていいほど知識がないため、読むにあたってそれが障壁となった
そのため、電子工作が好きな人におすすめということにしたい
メモ
ここからは気になった内容について触れていく
CPUの動作原理の説明がわかりやすい
普段われわれがコンピュータを使うとき、何らかのアプリケーションに触れることになる
こういったアプリケーションは人間のために作ってあるため、とても複雑な動作をすることが多い
ただし、CPUというのは結局のところ “ごく単純な命令を実行する” ものに過ぎない
CPUを理解するには、この “ごく単純な命令を実行する” ということを理解すればいい
演算部とメモリがどのように繋がっていて、データがどのように流れ、保存されるのか…
本の後半にて、こういった CPUの動作原理がわかりやすく説明されていた
必ずしも電子回路に詳しくなくとも、ある程度理解できるように解説してくれていると感じた
また、解説を通しておもしろい知識も得られた
たとえば
- CPUの本質は計算ではなくデータ転送である
- 待機状態にて、「何もしない命令」では具体的に何をしているのか
といったことだ
ここで解説するのは大変なので省略するが、気になった人は読んでみてはいかがだろうか
ちょっと通ぶれるような気がするし、何よりコンピュータを見る目が変わったように思う
電気で動く以上、電気の都合を気にしないといけない
多少は想像していたが、電子回路の事情はとても複雑らしい
どの程度の電圧で動くようにするか、誤作動を防ぐためにどのように結線すべきか、どうやって応答速度を調整するか…
CPUの仕組みを話す前に解決すべきこと、つまり演算よりも低レイヤな課題がたくさんあった
配線が本当に大変そう
ROMを作るパートがあったのだが、1bitにつき 1つの物理スイッチを使って作っていた
ここで作っていた ROMは 128bitだったため、なんと 128個のスイッチをくっつけて配線していた
凄まじく大変な作業だ…
最後に
まとめると、この本の魅力は
- 自分でも真似をして作れる
- CPUの動作原理をわかりやすく解説してくれている
といったことだと思う
この本を読んでいて再認識したが、さまざまな部品を組み合わせて何かを作り上げるというのは本当におもしろい
冒頭で回路の部品がいろいろ紹介されているのだが、ひとつひとつを見ても何の役に立つのかあまり見えてこない
ただ、そういった多様なパーツをたくさん組み合わせることで、複雑で高機能なものが作れてしまう
学んだのは主に CPUの動作原理だが、できあがるまでのワクワク、個々の要素どうしが繋がったときの驚きを感じることができた
この本の数あるレビューのひとつとして、少しでも読者の参考になると嬉しい